Windows でローマ字転写されたサンスクリット文字を入力する

はじめに

Windows・Mac・Linux 間のやり取りでしばしばユーザーを悩ますのは文字コードの問題で、Mac ユーザーからもらったファイルが文字化けして読めない、なんていう悩みは Web 上にごまんとある。しかし、最近では Windows でも UTF-8 ベースとなってきて、ファイル名など一部 UTF-8 では不便する場面もあるが、一頃に比べれば随分と文字コードの悩みは減ったのではないかと思う。

インド学の分野では、CP932 等の文字コードの制限を受けて、ダイアクリティカルマーク付き文字を含む標準的なローマ字転写法 (IAST) によるサンスクリット文字を入力すため、いわゆる ASCII 翻字 (ASCII文字コードのみによる翻字法) を用いてきた。この ASCII 文字コードによる翻字法には、Kyoto-Harvard 方式ITRANS方式 といった種々の表記法が存在し、さらには Kyoto-Harvard (KH) 方式の中でも、さらに細かな分類がある、といった複雑な状況になっている (cf. On the Transliteration of E-Texts in Sanskrit and Tibetan)。そのため、これら KH 方式等の ASCII 翻字法を自動判別してもとのデーヴァナーガリー文字や IAST 方式に変換するといったプログラムまで存在する (ex. Sanscript)。

https://skalldan.files.wordpress.com/2011/12/wpid-dev_iast_kh_2735a0192e74dd381747376880db787de43dae02.png

本題

UTF-8 で編集作業を行う限り、業界標準の IAST で直接入力し保存することができるので、今やあえてこうした複雑な ASCII 翻字を用いて、他との共用を目的としたテキストを作成することは、特別な理由がない限り避けたほうが良い、と言えるかもしれない。事実、多くの人が利用するであろうインド学関連の E-text の宝庫 GRETIL では、すべてのテキストが UTF-8 で利用できるようになっている。

そこでようやく本題である。最近私は Windows 7 を導入して少しずつ使いやすいように設定をしているのだが、UTF-8 で作業することに関してはほぼ問題がない。しかし、今回の記事のタイトルのように、Windows 環境でローマナイズされたサンスクリットを入力する、という決定的な方法がすぐには見つからなかったのであった。そこで、少し調べてみた結果を以下に残しておく。私は Windows の使用経験が浅いので、ここに残すと詳しい人から何かアドバイスがいただけるかもしれないと淡い期待を抱いたりもしている…

さて、Windows でのサンスクリットの入力であるが、おおよそ以下のように分類できると思う。

  1. MS Word や Open Office など各ソフトでの設定
  2. キーボードレイアウトを新たに作成
  3. Keyman Desktop を使用
  4. AutoHotkey のリマップ機能で定義

これらを順に簡単に見ていく。なお、ダイアクリティカルマーク付き文字を表示するためのフォントに関してはここでは触れないが、Vista 以降だと標準で付属しているので特に問題ないだろう。

などをご参考に。

1. 各ソフトでのキー設定

MS Word など各ソフトのマクロ機能を利用して、「Alt + a」を「ā」に、といったように割り当てていく。

私の同僚は秀丸マクロを利用して同種のことを行なっていた。NTEmacs 等では、追加でサンスクリットのインプット用の Quail パッケージを導入することで可能となる (cf. Indological Unicode support for Emacs and Omega)。現時点ではこの方法が最も一般的であろうか。

2. キーボードレイアウトを新たに作成

The Microsoft Keyboard Layout Creator (MSKLC) を利用して新たにキーボードレイアウトを作成する。各ソフトでの設定とは違って、Web ブラウザやメールソフトなどすべてのアプリケーションで使用できる。使用方法は、

で解説されている。私は MSKLC で作成された、

を使ってみた。「Ctrl + Alt + a」で「ā」を入力など、詳しくはリンク先を参照。「入力言語のホットキー」を設定しておけば、ショートカットでの切り替えもできる。

https://skalldan.files.wordpress.com/2011/12/wpid-us_pali.png

他にも、THL (Tibetan & Himalayan Library) の以下のキーボードも有用かもしれない。

3. Keyman Desktop を使用

Keyman Desktop とは多言語に対応した仮想キーボードアプリケーションである。キーボードの定義ファイル (.kmp) を追加インストールすることで各種言語のキーレイアウトが使用できるようになる。導入は、

が詳しい。記事中にあるように現在このソフトは有料だが、古いバージョン (Keyman 6.2) では Home Use Edition に限り Free で利用できる (Keyboard は二種まで)。キーボードには我々の分野では、

等が利用できるだろう。この Keyman もアプリケーションを選ばず使用できる。

4. AutoHotkey のリマップ機能で定義

AutoHotkey とは、様々なタスクを自動化することのできる Windows のユーティリティーであるが、とりわけ Hotkey の作成に有効である。非常に多機能で、

で詳細な解説を読むことができる。

オープンソースで公開されており、カスタマイズ性に優れ、自由にキー設定が行えることはもちろん、アプリケーションごとに設定を分けたり、あるアプリケーションでのみ設定を無効にしたりなど、細かい融通も効く。

リマップ の機能を利用すれば、簡単に「ā」等の文字を好みのキーバインドに割り当てることができる。例えば「Alt + a」で「ā」を入力したければ、設定ファイル (~/Documents/AutoHotkey.ahk) に、

!a::ā

と書いておけばいい (cf. ホットキー)。

Ctrl, Alt, Win, Shift 等の修飾キーを利用すると、もともと定義されている Windows や個々のアプリケーションのショートカットとぶつかる場合があるので、「,」(コンマ) を Prefix にしたものを作成してみた。例えば「, + a」で「ā」を入力する。

これを AutoHotkey.ahk と同じフォルダに置いて (%A_ScriptDir%, cf. A ScriptDir)、次の一行を AutoHotkey.ahk に書いておく。

#include Input_Skt_Prefix.ahk

Input_Skt_Prefix.ahk では以下のキーマップが定義されている。

 
,a –> ā ,r –> ṛ ,o –> ō ,t –> ṭ
,q –> â ,y –> ṝ ,p –> ô ,d –> ḍ
,i –> ī ,l –> ḷ ,m –> ṃ ,n –> ṇ
,k –> î ,=l –> ḹ ,h –> ḥ ,c –> ś
,u –> ū ,e –> ē ,g –> ṅ ,s –> ṣ
,v –> û ,w –> ê ,j –> ñ ,z –> ź

# Prefix やキーバインドは一例です。自由に書き換えてください。

使用方法の動画を撮ってみた。

# 相当眠くなります ^^;

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